2012年2月5日日曜日

ADOCとCOPMの違い

やっとパラパラのチャーハンを作れるようになったので,
次はオムライスを極めることになりました.tomoriです.


ADOCとCOPMの違い
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
今日はADOCとCOPMの違いについて考えてみようと思います.
ADOCはCOPMの遷移をベースに,
ACSの写真カードを使うアイデアをかけ合わせて作ったものです.

ただ個人的な意見としては,理論の有無,コストの高低の軸から,
両者には図のような違いがあると思っています.




ベースとなる理論
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ADOCに理論はありません.
そのかわり,CMOPのような分厚い理論の本は不要です.
COPMも分かりやすいマニュアル本がありますが,
ADOCはYoutubeで動画を見て,操作方法は理解できます.
またOTとは何ぞや!というCL中心やOBPに対する信念もあまり要りません.
よくPT,CM,ワーカーの方から使用していますよーとの連絡があります.
ADOCはリハに関わる全ての従事者がつかえることを目的にしています.
従って,OT専用の理論が無いことは強みであると思っています.



コスト
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

コスト面について,ADOCはiPad+アプリが必要です.
念を押して言いますが,iPadはWiFiモデルを買えばランニングコストはかかりません.
ただし5万程度は必要です.
COPMは基本的に無料です.マニュアル本が1900円くらいします.
ADOCはCLに併せて半構成的+構成的に面接を進めることが可能です.
自分から作業についてよく話してくれるCLでは,
イラストをザーッと流していきながら話を進めていけるし,
あまり自分の作業に関心が無いCLでは,
イラストを一つ一つ見ながらゆっくり進めることも出来ます.
一方,COPMではCLが自分の作業に関心がない場合,面接がかなり難しくなります.
またADOCではインフォメーションボタンを押すと説明文が出てきます.
面接の進め方も画面に出てくる指示に従ってできます.
イラストを選んでいくことも含め,面接の個人差が比較的出にくいと思います.
COPMは言葉だけで面接を進めていくため,個人差が比較的出やすいと思います.



面接の自由度
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

これはCOPMのほうがわりと構成的なADOCよりも高いとお考えの方が多いと思います.
僕もADOCを作って実際にCLに使ってみるまではそう思っていました.
つまりADOCの95項目はCLの自由な語りを阻害するだろうと.
しかし実際に使ってみると,意外にそうでもないのです.
またADOCは「その他」の項目を追加できるので,95項目にないものでも追加することができます.

侍さんも言っている通り,ADOCのイラストは扉 なんですよね.
イラストは会話のきっかけになって,CLが何かを思い出して,しゃべるしゃべる...
僕はわりとCOPMをやっていたほうですが,
その経験と比べても遜色ないくらいCLも自分の物語を語ってくれます.
これは比較したデータがあるわけではないのであくまで経験則です.

ただ僕たちの先行研究では,
OT実施中の100名のCLにADOCを実施し,最終的に480コの目標が設定されました.
その中で,95項目に無い「その他」の項目の割合は 1% (n=5)です.
つまり99%はADOCの95項目でカバーできたわけです.
もちろんCLの自由な選択は阻害されたかもしれませんが,
「その他」の項目が1%って少ないですよね.



ADOCの欠点
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

COPMはモノがなくても試用できますが,ADOCはiPadがなければ試用ができません.
なので,会話のきっかけとなって話拡がるよーとか,簡単だよーとか言っても
ユーザーはiPadがなければ試すこともできません.
これはどうにか対策を考えたいなと思っています.
あと,盲目のCLにはADOCは使えません.



さいごに
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

最近COPMとの違いは?という質問を受けるので,書いてみました.
長くなってすみません.

ADOCとCOPMを実際に両方使った経験がある方がいれば,
コメントお願いします.


追記 2/6
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

一つ大事なことを忘れていました.
ADOCはShared decision making(意思決定の共有)を重視しています.
つまりCLとOTが一緒に目標を決めるということです.詳細はこちらから
COPMはCL中心です.CL中心といってもパートナーシップを結ぶことだ,と定義されているので,意図することはADOCもCOPMも同じだろうと思うのですが,
COPMはOTがCLに必要だと思った作業を提示するプロセスがありません.
これは実際された方は分かると思うのですが,誘導にならないかなーと結構悩むことが多いです.
でも専門家として必要に応じて誘導することも必要だと思っています.

14muraさんご指摘ありがとうございました,



4 件のコメント:

  1. 追加して言えば、COPMは遂行度を評価します。ADOCはしません。
    他の評定もADOCは、重要度は4段階、満足度は5段階です。

    COPMの方が歴史があって、ADOCは産まれたて。

    使用感としては、COPMの方が短時間。
    ADOCの方が、対象者の射程が広いです。

    僕はCOPMは先発型。
    ADOCは抑え型だと思います。

    返信削除
  2. 松澤さん
    いつもコメントありがとうございます.
    おっしゃる通りかと思います.
    ただADOCは抑えでもいけますし,先発でもいけるかなと思います(笑)

    返信削除
  3. Takashi Takebayashi2012年2月8日 22:49

    >一方,COPMではCLが自分の作業に関心がない場合,面接がかなり難しくなります.

    ここの部分が面白いなと思いました。関心いかんに関わらず、慢性期の中枢障害だと
    麻痺側上肢を使わない事による麻痺側上肢が関わる動作に対する意味記憶の劣化とい
    う観点からも視覚的Queとそれにともなう再認は、無からの再生よりも有効であり、
    ストレスレスだという気がします。

    また、作業療法は個別性に対応できる事が一番の武器と言う反面、それはいつまでた
    っても作業療法が科学にならないことを示します。その中で,ADOCは治療の目標を統制す
    るよいツールとなる可能性があるなぁと思ってます。
    でも、あくまでも研究デザイン上の話ですよ(笑 臨床には無限の目標があって然りです(笑

    返信削除
  4. 竹林さん
    そうですね,以前先天性疾患の本人や親は作業の経験が少なくなってしまうので,何かやりたい事は?と聞かれてもイメージしにくいと聞いたことがあります.作業のイメージがある人はCOPMでもいいんでしょうが,無い人だと難しいでしょうね.作業療法の科学,問うていきたいですね.

    返信削除