さて,今日は意味のある作業について書いてしまいやす.意味が含まれているのが作業なので,意味がある作業って言葉はあまり好きではないのですが,それはさておき...
まずWFOTの「作業療法におけるクライエント中心」では,「作業療法の目的について,個人的にしたいと思う作業,する必要がある作業,社会的に文化的にすることを期待されている作業に参加することを,クライエントができるようになることである」と定義されています.これよく見てください.3つのうち2つは,本人の希望ではなく,周りから求められるような作業ですよね.
じゃ作業とは何か,ということですが,基本的に,セルフケア,生産活動(仕事や学業),レジャーです.侍さん力作のCMOPの図を見てください.黄色が作業ですが,丸いですよね.丸みにも意味があります.カナダのモデルでは,この3つの「バランス」が重視されています.セルフケア,仕事,レジャー,どれも大切で,いずれかに偏ってはいけないということなんです.
急性期の作業療法士と話す機会がよくあるのですが,皆さん「最近,肩身が狭い気がするんだよね」と言います.「意味のある作業」とか「作業に焦点を当てた実践」とか,GOGO計画での地域推進とか聞くと,うちら急性期はね〜みたいな.それっておそらくこういうイメージだと思うんです.クライエントの重要度を重視した場合.
これは半分正解で,半分不正解だと思っています.僕は,今のsituationで価値のある作業も,十分に「意味のある作業」だし,その作業ができるように支援するのが「作業に焦点を当てた実践」だと思います.
これは半分正解で,半分不正解だと思っています.僕は,今のsituationで価値のある作業も,十分に「意味のある作業」だし,その作業ができるように支援するのが「作業に焦点を当てた実践」だと思います.
何がいいたいのか.本人がやりたい作業だけが「意味のある作業」ではないし,本人がやりたい作業だけをできるようにすることだけが,「作業に焦点を当てた実践」ではないということです.もちろん本人の希望は最大限尊重する.これは希望というより,もはや夢だなぁと思うことも一旦も受け止めます.でも,いくら本人が希望するからといって,いま必要なセルフケアをそっちのけで余暇活動ができればいいってもんじゃないですよ〜ってことです.それは専門職の放棄だと思います.
僕らの ADOC では Shared decision-making(SDM)を重視しています.クライエントも専門職も,同じ立場で,パートナーとして,意見し合う関係です.その関係性を作りつつ,目標とする作業を重要度と緊急度のマトリクスで整理することをオススメします.
重要度と緊急度のマトリクスで整理することで,全体のつながりが可視化できます.今は歯磨きやトイレの練習をするけども,ゆくゆくは調理,水泳,外食に関する練習もしましょうねと.もちろん,外食できなくても病院のフロアでいいから友達と談笑したいということで,外食の緊急度を高くして,先にやっちゃうことも可能です.
とかく作業の全体を見た上で,今なにするか考えることが大切です.下図のようになると,ADLができることが最終目的になってしまいます.
歯磨きやトイレができるようになることが人生やリハの最終目標なんて,チョー淋しすぎませんか? 今取り組まないにしても,本人にとって重要な作業,叶えたい生活へ向かっているという感覚を持ってもらうことが重要だと思います.
それをふまえた上で,も一回言いますが,本人がやりたい作業だけが「意味のある作業」ではないし,本人がやりたい作業だけをできるようにすることだけが,「作業に焦点を当てた実践」ではないということです.
最後まで読んでくださいありがとうございます.
>今流行りと言われる「意味のある作業」や「作業に焦点を当てた実践」.そこで使われる「作業」って,園芸とか,釣りとか,外食とか,そんな余暇活動をイメージしがちですがそれはちょっと違うと思います.
返信削除おそらく私たちOTが具体的にイメージできている「意味のある作業」は、全体のごく一部なのだろう、と思いました。
中川先生、tomoriです。そうですね。一部ですね。何か作業が一つ出来ると芋づる式に出てくる事があって、こんなことリハの先生に相談しちゃまずいなぁとブロックしてる可能性を感じます。
削除はじめまして。ADOCに出会って作業療法の楽しさに気付いたものです。今回の内容を読んでお礼を言いたいことがありコメントいたしました。
返信削除自分は今回の内容をわかっていたつもりだったのですがこのブログを読んで振り返ってみると、いつの間にか後輩や他職種の人達と話をする際に「その方にとって意味のある作業は」のスタンスで、ADLを含む「する必要がある作業」や「社会・文化的にする事を期待されている作業」に目を向けていないような形で話をしてしまっていました。
今回の内容を読んでこのことに気付くことができたのは自分にとってとても大きな収穫です。ありがとうございました!!
これからも色々勉強させていただきますのでよろしくお願いします!!!
tomoriです。ありがとうございます。もちろん本当に本当に意味のある作業がADLという事はないとは思いますが、時と場合によってADLになることもありますよね。それをちゃんとクライエントと共有できたらいいですねー。
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