施設にいて地域には出てませんが、今日は地域について語ってみたいと思います。tomoriです。
すみません、長いです。
2025年に向け、沖縄県ではPT,OT,STの県士会3団体がタッグを組み、4月から一般社団法人 沖縄県リハビリテーション専門職協会なるものを立ち上げたそうです。今年度は県から委託費をもらいつつ、主に地域包括ケアシステム構築に向けた人材育成、人材管理・紹介、研修会などを行うそうです。昨夕はその一環として宮古島での説明会でした。
POS揃い踏みというのがとても良いなと思いました。地域ってどの職種がイニシアチブを取るかという椅子取りゲームになるのかなぁと思ってましたが、利用者の立場ではいうまでもなくどの専門職も必要な訳で、そのニーズに3団体が一丸となって応えることが、地域、市民に対する専門職として真摯な姿勢ですよね。
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さて、地域包括ケアシステム。市民の健康を、より川の上流から攻めるという目的では素晴らしいことです。長く心身の健康を保つことは多分QOLの底上げになるでしょう。そして、介護保険などの共助に依存しつつある社会の中で、健康は自ら創るものという自助の必要性を再認識してもらうことも賛成です。この辺にセラピストの自立支援と地域作りへの働きかけが期待されるところです。
ただ、日本の健康寿命は現時点でも高く、アメリカなどと比べて伸びしろは多くはないことを理解しておく必要があります(アメリカが今の寿命の伸び率でいくと今の日本のレベルになるのは30年後と言われています)。また、現時点でも介護予防の効果があると言っても、サンプリングバイアスの混入が加味されていない報告が多いと思われます。つまり介護予防の教室とかに参加する高齢者はもともとが健康志向であるはずなので、本当に問題なのは教室に来ない人たちに効果があるのか、どういうアプローチが良いのか、科学的な検証が必要かなと感じます(その点、首都大の石橋裕さんの閉じこもりの方の作業とQOLの関連をみた研究は興味深かったです)。認知症予防効果の話がもう少し前に出てきた方が良いかなと個人的には思っています。
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一方、地域包括ケアシステムの実現を費用削減を目的で説明し始めると、その達成は難しくなるので、個人的にはやめた方が良いかなぁと思います。
1番の理由は、地域包括ケアシステムは高齢者個々人の行動変容を促すために行われているはずなのに、経済のマクロの視点で説明されると集団心理が働くからです。人は、多く集まれば集まるほど、誰かがやるさ、自分1人が頑張ってもどうせ変わらないよ、と考える傾向にあります。しかも何兆何千億円とか、人口が何千万人とか、大きすぎてピンと来ない数字です。その結果、個々人のコミットが弱まり、システム構築はうまくいかないのかなと。僕なら、あなたが病気になった場合とならない場合とで、あなたの生活費、あなたの医療費、娯楽費、介護負担によるあなたの子供の家族の生活、孫の学費、がこう変わります、という説明をするかなぁ。あと消費税の話とか。そこまで落とし込んで行かないと、市民は地域包括ケアシステムを身近な問題に感じないでしょう。
2番目は、現行の介護保険システムでは介護予防にインセンティブが働かないからです。もはや介護保険は公共工事に変わる雇用創出ですので、倫理観の薄い支援者はどんどん介護サービスを加えていきます。そして宮古島の1万人あたりのヘルパー事業所数は全国平均の約3倍、デイサービスは1.7倍です。全国平均の高齢化率が25〜26%、宮古島は21%なのにサービスは多い。それくらいみんな生活が掛かっているので仕方ないことです。宮古島に限って言えば、もう介護を公共工事的して地方移住を促進してしまうのも手かもしれません。そのためには市町村持ち出し分を、移住者がもともと住んでいた都市部が持つことにしないといけませんが。ちなみに去年の都市部の高齢者へのアンケートでは、宮古島は何と介護移住先の人気ナンバーワンです(笑)
また3番目に、マクロ的な見方をすると、いま国全体の財源的には年金11兆、医療9兆、介護2兆円です。頑張って介護予防の無駄遣いを減らしても、生きてる限りは年金は支給され続けるわけで、生き方と併せて逝き方も考える必要があります。しかも医療経済学では、介護予防に経済効果は無いという見方が強いです。介護予防に経済効果があるという報告は、主に厚労省と財務省の資料ですよね?(笑)まあ経済効果があったとしても0.6兆円程度が目標値です。一方、去年は年金運用で5兆円の損失があったとも騒がれてます。介護予防の経済効果は全体でみればこのくらいのインパクトでしょう。プロパガンダに惑わされない知能を身につけたいものです。
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まとめると地域包括ケアシステムの必要性は高齢者の生き方を支援するのに必要という主張には賛成ですが、経済効果の切り口では少し微妙かなと思っています。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
昨日はお会いできて良かったです。
返信削除思い起こせば、これまで受けてきた「地域包括ケアシステム」の説明はいずれも、「このまま2025年を迎えたら大変だ」から語り始められていました。とりわけ宮古島市の場合は介護保険料の高さが取り沙汰され、このままでは介護保険制度が破綻するという話が前面に出されてきました。市も保険給付の適正化に躍起になっているようです。自分が生活する地域社会の問題ならば是非協力しようと、無邪気に受け止めていましたが、もう少し突っ込んで考えなくてはと反省しています。この記事で新たな視点をいただいたと感じています。
いや本当の理由は保険制度が破綻するからなんですが,国民に自助の協力をお願いする際には,もっと個人のメリットになる話をしたほうが実現可能性が高まるのでは?という提案であり,問題の本質は財政破綻です.
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