2016年5月28日土曜日

Journal of Physical Therapy Scienceが叩かれたらしい

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暑くて眠れず夜中に仕事しています.tomoriです.梅雨で29-30度はさすがに辛い.しかしついこの間,秋田県が30度超えてると聞いて,びっくりしました.



さて,理学療法科学学会が出版しているJournal of Physical Therapy Science(JPTS)がアメリカのJeffrey Beallさんというブロガーに叩かれているようです.理由は以下の通り(カッコ内は僕の解説)
  1. 毎月50本が通っている(通りやすい)
  2. 編集長や編集委員などが見当たらない(誰が編集・査読しているか分からない)
  3. 論文が2-4ページと短く,ほとんどが4-5週でアクセプト(早すぎるということはちゃんと査読していない,すぐOKしているなどが考えられる)
  4. 出版社がある日本以外の国の著者が多い(←悪いこと?)
  5. self-citationが多い(インパクトファクターを釣り上げている)
  6. Peer Reviewの根拠がない(2と同意)
などが理由だそうです.実際に確認してませんが,これが本当だとするとちょっとやり過ぎかもですね.

僕も,一人で初めて英語論文に投稿したのはこのJPTSでした.あの頃はインパクトファクターもなく,minorな雑誌でした.それでも自分の英文が活字になって掲載されたときは,次に繋がる大きな自信につながったのを覚えています.

英語が苦手な日本人にとって,ファーストステップ的な雑誌の役割もどこかで必要かとは思いますが,上記の指摘のようになるとちょっとやり過ぎだろうと言われても仕方ないのかなと思います.ともかく個人的には,JPTSの掲載が僕の英語論文を書くモチベーションアップにつながったことは間違いなく,JPTSさんには感謝しています.



なぜこんなことを取り上げたかというと,ここ10年で,教員になるための研究業績,そして大学院の修了も,インパクトファクターで決まるような,ちょっとえげつない世の中になってきました.さらに,ITの普及によって「紙面の関係でより良いものを選定しなければいけない」という概念がなくなりました.この2つの歪みがJPTSに集中したのでしょう.つまり,この件は,なにもJPTSだけが責められるわけではなく,僕も含めJPTSに投稿した著者も加担していたという,反省をもって取り扱わなければいけません.

そしてオープンアクセスのジャーナルは他にもごまんとあります.そんな今だからこそ,地に足をつけた研究スタイル,そして研究者としての正しい倫理観を持つことが,長期的な生き残りに繋がるのかもしれません.



また,論文の編集や査読に携わる機会が増えてきてる昨今,改めてエリを正さなければと思ったのです.僕はいま日本臨床作業療法研究の編集長で,その他多数の論文を査読する立場にあります.査読するときには,論文が掲載されることの成功体験を多くの人にしてもらいたいという気持ちと,こんな論文は掲載できないだろうという気持ちと,常にジレンマを感じます.優しい僕は(笑),前者の気持ちが優位ではあるのですが,上記のJPTSのような指摘があると,ハリボテの成功体験は逆に当人にとって良くないかもしれません.

あ,あと,日本作業療法士協会のAsian journal of Occupational therapyも体制を整えていこうと学術部が頑張っています.僕も査読委員として応援するつもりですが,JPTSの同じ轍を踏まないことを期待しています.



最後まで読んでくださりありがとうございました.






3 件のコメント:

  1. インパクトファクターが付いている雑誌が少ない中、日本のリハ関係雑誌としては健闘していると思います。インパクトファクターがつくようになってから、随分、しっかりした論文が増えており、欧米の他の雑誌にも引用されていますね。査読者の公開は、一定の時間を経ないと出来ない筈なので、最近インパクトファクターが付いたばかりでしょうから、まだなされていやくて当然だと思います。個々の論文の質は、結局読者が決めることなので、さまざまな意見があると思います。今のところ、公的保険で理学療法を提供している国の発行するアジアのジャーナルで、この質を担保しているのは残念ながら、この雑誌しかないと思います。OTの雑誌であれば教えていただければ幸いです。

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    1. 確認が遅れて申し訳ございません。このブロガーの指摘に全て賛同しているわけではありません。しかしJPTSが一定の役割を経たとも思っています。そして次どう展開していくのか楽しみであります。

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  2. 現在 インパクトファクターはついてますので、古い情報に惑わされない事が大切です。じょうきOTの雑誌にはまだインパクトファクターはついていませんので、むしろOTは、気をつけねばなりません。

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