2011年4月12日火曜日

クライエント中心療法の次のステージへ

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生後一ヶ月の次女ですが,長女の同じころに比べて身長体重は小さいのに,
頭位は一緒でした… tomoriです.
この子も僕の悪いDNAを引き継いでしまったか!


さて,作業療法にとってクライエント中心は不可欠.
どの本を見ても書いてあります.
そう明言してないのは日本くらいでしょう.

そこで,日本の作業療法は世界に比べて遅れている.
駄目だ…

なんて思うわけです.
たしかに遅れているとは思うけど,
CL中心ははっきり言って西洋文化で生まれた概念なので,
そのままでは我が国の文化に当てはまらないだけ.
と僕は思う訳です.

温厚,控えめが美徳,相手を敬う,信用する
などの日本人の気質があるわけで,,
自己主張が強い西洋文化の評価がそのまま活用できるとは思えないのです.


また,いろいろ調べてみると,
そもそもCL中心療法がどうだろう,と思いました.
CL中心療法って,Informed consent に似ていませんか?




もともとPaternalismが良くないということでInformed consent が生まれたわけですが,
Informed consent って「CLの意見を尊重する」という名目のプロフェッショナル放棄ともとれませんか?

僕も親父がガンの時に,いろいろ選択肢を説明されて,後は家族で話し合ってくださいと言われ,
で,お前はどう思うんだよ,と突っ込みたくなったことがあります.

つまりInformed consent って,THの発言権を縮小することで,CLの意見を尊重している構造です.
図で表現した通り,CLの大きさは変わらずTHをぐっと小さくすることで,
相対的にCLを優位にした,という構図ですね.

それはCL中心療法にも当てはまるでしょう.
事実,COPM,OSA,Kawa-modelではTHが作業を選択することはできません.
最終決定権はCLにあります.
でも認知症,意識障害,高次脳機能障害,発達障害,妄想のあるCLはどうしますか?
その場合,CL中心療法だと,Who is client ? といって,
周りの人がCLではないか?と無言のプレッシャーをかけてきます.

THは,CLが必要と思っていない作業を,
あなたにはこれが必要です! と勧めることはできません.
なんせCL中心ですから.

もちろんPaternalismからすればCL中心はだいぶいいと思います.
でもそろそろnext stageもありかなと思います.

Shared decision-making (SDM)は,CLの意見を最大限に引き出した上で,
CLとTHが対等な立場で意思決定を行うというものです.

SDMでは,CLの意見を最大限に尊重し,引き出した上で,
THとして必要があれば意見する,ということです.
当たり前と言えば当たり前のことかもしれません.
でもCLの意見を最大限に尊重する,ということが難しいのです.

そこで文明の利器とまでは言わないのですが,
CLの意見を分かりやすい手順で引き出しましょう! ということでADOCを開発しました.
ADOCはイラストを選ぶだけですので,CLも口答だけの面接より意思を表現しやすいと思います.
またTHもiPadの手順に従って面接を進めることができるので,
より分かりやすい構成的な面接になります.
選んだ作業について,なんで選んだか?と話を聞くと,
そのCLの社会背景まで見えてくることがあります.
予備調査では,失語症の方や認知症の方との意思決定の共有に非常に有用だ,
とコメントをいただいています.

CLの意思を最大限尊重した上で,
CLとTHが同じ立場で,意思決定をする.

CL中心からShared decision-makingへ.
ADOCで新しい一歩を踏み出せればと思います.

2 件のコメント:

  1. tomoriさん とても興味深く読ませていただきました。

    日本のOTの多くは、作業療法介入は
    パターナリズムが当たり前で、
    そこに疑問すら抱いていない人が多いんだと
    思います(パターナリズムという概念自体も
    殆どが知らないと思いますが・・・)
    クライエントも同様で、OTに”治療してもらう”
    としか思っていない・・・
    OT界の啓蒙の問題と、国民性の問題が
    絡み合っているんでしょうね。
    だから、カナダを代表とするCL中心の思想を
    臨床に取り入れようとしても、上手くいかずに
    疑問を抱き、再びパターナリズム一辺倒の介入に
    戻ってしまうOTも多いんだろうと・・・

    OTの学習していくプロセスとしては、まず
    CL中心の考え方をしっかりと学んでから、
    実用に耐える、かつ日本の風土でも実用的な
    SDMを学ぶというほうが、OTとは何たるかを
    理解しやすい印象はありますね(^_^)
    ってゆうか僕がそうだったというだけの理由ですが^_^;

    高度な医療行為については、クライエント側は殆どが
    全くの素人なので、クライエント側だけに判断や意思決定を
    ゆだねるのは乱暴だと思いますが、OTの場合は、CLの
    意味ある作業に焦点を当てますよね。CLしか知らないことが
    沢山あります。だから基本的にはCL中心で、その作業を実現したり、
    現実的に生活していくことを考えたときに、他の必要な作業や、要素的な部分、
    ユニークな改善方法などは、適材適所に提案していく。こんな協業の
    イメージでしょうか。

    「あなたの作業ですから、あなたに全ての判断を任せます」という姿勢が
    協業を困難にするんだと思います。「一緒にあなたの実現したい生活を構築
    していきましょう」という並走するイメージがOTにもCLにも必要なんだと思いました。

    勉強になります。いつもありがとうございます。

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  2. samurai さん

    いつも僕の不足を補ってくれてありがとうございます.
    OTではCL中心がベースになると思います.そこは同意です.
    またコラボレーションするとか,パートナーシップを結ぶとか
    CL中心の定義にも書いているので
    SDMとそう変わらないと思っています.

    でもCL中心をやっているつもりでも,
    CLはそう思っていないことがしばしばあります.

    なので,ADOCでは一緒目標は一緒に決める
    ということを強調したいと思ってSDMとあえて言っています.
    使っていただいてそこらへんも感じていただけたんじゃないかなと思います.

    ありがとうございます.

    返信削除

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