2013年3月21日木曜日

作業療法を学ぶ 2013版

Clip to Evernote
春うらら,花あかりに誘われて... など花言葉でも宣わってみたい爽やかな季節がやってきましたが,目はしょぼしょぼ,ノンストップ鼻水のtomori です.今年は花粉がひどい.そして黄砂にPM2.5.風流ある美しい景色は見た目では今までと何も変わらないのですが.環境破壊は見えないところで意外と早く進んでいるのかもしれませんね.

さて,今年も「作業療法を学ぶ」を編集しました.いつも2年生に配布しています.一足先にブログでアップします.



作業療法を学ぶ [2013版] 

作業療法士を志して早1年が過ぎましたが,大学での勉強って高校までの勉強とちょっと違うなと薄々感づいてきた人はいますか?.大学も一応学校なので,理屈上は,授業をよく聞き,先生の教えを守り,テストで良い点を取ることが立派な作業療法の道に繋がっているはずなんです.なんですが,個人的にはむしろ逆の場合が多いと思っています.実際,学校で優秀な成績の学生が実習で苦労し,6割スレスレの学生が活き活きと実習をすることも少なくないです.なぜでしょう…

作業療法では,先生の教えや教科書に書いてあることを覚える記憶力より,それらをベースに自分で考える能力が必要になるからです.なぜ考えることが必要かというと,作業療法はマニュアルや答えがありません.医療の中でも不確実性が高い学問だからでしょう.

例えば,医師は患者さんの症状にあった薬を処方します.薬は禁忌事項や適応,数量など細かく規定されていますので,患者さんの症状を理解できれば,ある程度マニュアルに沿って薬を処方することも可能です.一方,作業療法は「作業を通してクライエントの健康と参加を促進すること」が目的です.医師が薬を処方するように,クライエントが今よりも健康になるための作業遂行を一緒に考えます.

そもそも健康ってつかみ所が無い,見えにくいものです.見た目の健康状態は同じでも,クライエント一人ひとり感じ方が異なります.例えば五体不満足の乙武洋匡さんが「自分は健康だ」と言い,五体満足の方が「不健康だ」と言う事からも分かる通り,人にとって自分の健康とは何かと定義するだけでも難しいです.加えて,作業.これは手工芸だけでなく日常の活動全てが対象となるので,人が営む作業についても幅広い知識と経験が必要です.

男性の作業療法士が化粧好きのクライエントを担当しますし,女性の作業療法士が木工好きのクライエントを担当することもあります.そもそも一人暮らしも料理さえもしたことない人が,他人の一人暮らしや料理ができるように支援するという.そんな時,自分には出来ませんので他の作業にしましょうと言えますか? 言えませんよねぇ.

よって基礎医学の勉強ばかりじゃなくて,学生時代から色んな場所で,色んな作業の経験をしてください.そういう意味では365日作業療法の勉強はできます.座学の勉強と同じくらい社会経験も大切です.年齢や性別などに関係なく,何でも自分で実際に体験してみてください.だからといって遊んでばかりでは無理なんですが.なんでも中庸が大切です.

このように,心身機能,人生,希望,健康,参加,作業,環境などなど,作業療法で扱うものは全て複雑です.この組み合わせを考えるわけですから,作業療法は「これが正解です!」と定式化できるものではありません.まあ,だから作業療法という仕事が必要になるわけですが(笑).今後いろんな仕事が機械に取られていきます.ROM訓練,筋力訓練などは,ロボットでも一部対応可能になってきました.複雑な仕事は,難しい分,人にしかできません.皆さんは,目の前の患者さん一人一人の心身機能,人生,希望,健康,参加,作業,環境をチャンプルー(沖縄の方言でごちゃまぜ)にして,患者さんが健康になる作業遂行は何か,またどうすればできるようになるのか一生懸命考えるのです.

僕は別に皆さんを脅してなんかいません.「作業療法士なんてムリだ…」と思うのも全然早いです.僕は,早いうちにこの仕組みに気づき,少しずつ自分自身を適応させていけば,将来の混乱は回避できる.いや回避とうより,自分で考える癖がつけばOTが楽しくなると言いたいのです.私も現場で働いていたころ,自分なりに考えた評価を行って,あーでもないこーでもないと試行錯誤しながら患者さんと一緒に作業遂行について考えて,軌道修正しながら目標を達成し,「先生のことは一生忘れません」と言われた時,「俺って人の役に立ってるー」( ̄∇+ ̄)vキラーン と自分に酔いました(笑).

あいにく福祉の心も将来の夢すら持ち合わせていなかった私は,浪人中に親戚に勧められて作業療法の学校を受験しましたが,今はこの仕事に就いて本当によかったと思っています.いつか皆さんにも「これだからOTってやめられないよね」という境地を迎える日が来ることでしょう.それまでの道のりは決して楽ではないです.し作業療法は自分って人のためになっていると直に感じることができる仕事です.充実感もあり,社会の為にもなる仕事って最高の仕事だと思います.ちなみにアメリカではBest jobとして上位にランクしています.
 
くどいですが,楽しくなるポイントは自分で考えるということです.考えることは効率が悪く,無駄や失敗も多いです.試験範囲だけを勉強したり,過去問をもらって覚えたりする勉強法とは真逆です.例えば,大学から品川に行くという課題を出されたとして,高校までは中央駅から京急の快特に乗れと教えられますが,大学ではコンパスだけ渡されて北に行けと言われる感じでしょうか.かなり面倒です.時間かかっていいし,失敗してもいい.その旅路において,自分で考える力を養うことができます.義務教育ではいかにミスを少なく皆に基礎学力をつけるかでしたが,大学はミスしてもいいのでチャレンジ精神を養うところです.もし失敗しても,「専門家とは自分の分野で,おかしうるであろう失敗を全て経験した人のことだ」(ニールス・ボーア)と言い切って結構.

私は,皆さんには考える力はあると信じています.考えられないんじゃなくて,考え方が分からないのだろうと思っています.高校を卒業すれば,正解がない問題を出されるので,正解できなくて当たり前.私たちは作業療法について分からないからこそ学費を払ってまで勉強していると切り替えて,どんどん質問しましょう.それが考える力を養う近道だし,作業療法が楽しくなる近道です.


ようこそ作業療法へ.


0 件のコメント:

コメントを投稿

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...