さて,今日は以前,日本作業療法研究学会雑誌へ書いた巻頭言を載せます.昔基礎研究をやっていたこともあり,僕も前から本雑誌にいろいろ関わらせていただいています.一応,雑誌の表紙やマークもデザインしましたよ.随時投稿を募集していますので,皆さまどしどし投稿してください.
テーマは,日本文化の特徴と作業療法について,です.
「やおよろず」的 作業療法
「日本人は,キリストさまが生まれたクリスマスにはケーキを食べて祝い,七五三になると神社へ行き,そしてお葬式はお寺.結婚式は最近,神道式をキリスト教が上まわりました」※.
もはや当たり前すぎて普段から意識することはなくなりましたが,よく考えると我が国には様々な宗教が入り交じっています.しかも海外から入ってきたものばかり.この状況を読者の皆さんはどう思われますか.無節操でしょうか? それとも柔軟な文化ですか? 玄侑宗久さんは,たしかに無節操かもしれないが,そこに日本人の寛容さを感じると述べています.
玄侑さんは住職と芥川賞作家の2足のわらじをお持ちで,それを楽しんでいらっしゃるそうです.そして「やおよろず」的な考え方を奨めています.「やおよろず」というのは,いわば無理に一つの価値観に縛られずに,様々な価値を並列させている状態を指すそうです.ちなみに日本には800万の神がいるとされ,私の地元沖縄では先祖が神様です...
話は代わり,近頃,年に1度ほどはテレビでリハビリテーションが紹介されるようになりました.大方なんらかの新しい機能訓練がクローズアップされます.それに対して,巷では「画期的なリハビリテーションだ!」とか,「患者さんの機能回復を固執させてしまう!」などの意見が耳に入ってきます.
私はそれを聞くたびに,まず目的と手段を混合してしまっているなあと思います.機能訓練はあくまで手段であって目的ではありません.作業療法の目的はといえば,患者さんの意味のある作業の実現を通して健康を促進することです.その目的を達成するための近道であれば,我々はどんな手段でも貪欲に取り入れることが求められるのではないでしょうか.患者さんの唯一の目的の達成にはこだわるけども,達成する手段は一つにこだわらない.私はそれを「やおよろず」的作業療法と呼んでいます.日本という国はもともと「やおよろず」です.一つにこだわらない,いろいろあっていいじゃないでしょうか.
本誌は,作業療法の臨床研究から基礎研究まで,幅広い領域の論文を掲載しています.これからも「やおよろず」的作業療法を支援するような雑誌であり続けることを期待しています.
※引用 玄侑宗久著:やおよろず的.四季社.2005.
最後まで読んでいただきありがとうございました.
やおよろずについては以下の文献から引用しました.
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