2018年4月15日日曜日

作業療法研究の優先順位

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京極さん,竹林さんと一緒に研究法の本を書いています。tomoriです。全ての原稿が上がってきて,今編集の段階なんですが,お二人の原稿を分かりやすく仕上げるのが僕の役割になっています。



さて,研究テーマの決定って結構むずかしかったりします。以下,作業療法研究の優先順位に関する研究があり,ゼミ生と読みましたので,紹介します。


国際的作業療法研究の優先順位:デルファイ法
World Federation of Occupational Therapists, et al. "International Occupational Therapy Research Priorities: A Delphi Study." OTJR: occupation, participation and health 37.2 (2017): 72-81.
フリーで読めます

WFOTが企画し,加盟国46/87カ国がこのデルファイ法に参加し,3ラウンドで以下の8つのカテゴリーができたようです。

  1. Effectiveness of OT interventions 
  2. Evidence-based practice and knowledge translation
  3. Participation in everyday life 
  4. Healthy aging
  5. Occupational therapy and chronic conditions
  6. Sustainable community development and population-based occupational therapy interventions
  7. Technology and occupational therapy
  8. Occupational therapy professional issues

以下,8つのテーマの解説と,私見を述べたいと思います。もしお読みの方で,検討中の研究テーマがあれば,8つのどれに当てはまるか,考えてみて下さい。




1-2位 作業療法介入研究とEBP
1位のエビデンスレベルが高い手法での介入効果研究は,そりゃ優先度高いのは分かりますが,その次にEBPやEBPを実践するための知識や方法に関する研究が入っているのも興味深いですね。研究者や教育者はEBPへの行動変容を促しているかちゃんと考えろと明記されており,エビデンスを作るだけでなく,使うことまでちゃんと考えているなと。この辺は研究本で最も強調したいところでもあります。


3位 いわゆる作業の研究
タイトルだけみれば,今更いるかなぁと思いましたが,服役中の人とか,退役軍人とかの作業を考える,という新規開拓っぽい印象。そういえば,WFOTの新しい教育指針で,1年生?のときに,新規開拓の目的も含めて「作業療法士がいない」ところで実習するとか,日本ではあまり考えられないようなことも盛り込まれていましたね。日本では,個人の興味により過ぎの質的研究が多い気がします。こういう新規性をもった質的研究が増えることを期待します。


4位 健康長寿
これもなんかテーマだけみれば真新しさは無いのですが,そもそも2025年問題がまだ到来していないから実感がないのかもしれないだけですね(笑)。センセーショナルだったWell Elderly studyも実はそんなに大きな効果が期待できるものでもない気がします。でも,この手のテーマは机上の空論ばっかで,作業療法っぽい実証研究は殆ど無いですし,今後ずっと優先度が高いテーマであることは変わりないですね。


5位 慢性疾患への作業療法
これは作業療法で自己管理を指導しようというコンセプトです。それによって地域で暮らそう,とか。テーマ的にいいですよね。エイズ,精神疾患,糖尿病など,いろんな慢性疾患への作業療法研究が,一括りにまとめられた,というイメージですね。子供もここに入れられているようです。セルフマネジメントは作業療法のどの領域でも大事なコンセプトになると僕は思っていて,世界的にセルフマネジメントに造詣のあるLinda先生福岡国際学会にお招きしています。ぜひ最先端のセルフマネジメントを聞きに来て下さいね。


6位 地域開発,ポピュレーションアプローチ
地域全体をみましょう,ということですね。日本でも,地域包括ケアシステムの推奨により,市町村で働く作業療法士も増えてきたのではないでしょうか。僕の周囲でも,行政との協働により,調査研究やコホート研究を実際に関わる研究者も増えてきました。作業療法士が地域全体の作業機能障害をみていく,そんな研究とかも進むといいですね〜。


7位 テクノロジー
作業療法でテクノロジーをどう活かすのか,そんな内容です。この辺,東京工科大学でも教育研究でリードできるようになるといいなと思います。一応,ICTについては,僕も前に少しレビューを書いたことがあります。

友利幸之介. —ICT と臨床業務 ①—ICT のエビデンスと実際. 作業療法ジャーナル, 2015, 49.9: 932-940.

この文献でも紹介したのですが,青年期うつ病患者向けの認知行動療法をベースに開発されたゲーム,SPARXが,日本語対応になって販売されているようです。RCTで検証され,BMJに掲載されています。僕も含め,単に新しいやつ開発しましたー!で終わる研究が多いので,SPARX的なRCTまで考えた研究を見習いたいですね。


8位 専門職の問題
主に教育系のテーマですね。海外は何年も前から修士レベルになってきているにもかかわらず,日本は専門学校も含め3年からです。教える内容も学校や教員によってかなり違う印象があります。教育研究はあまりやっている人がいないのですが,ちゃんとやるべきだと僕は思っています。スキルの高い作業療法士がどんな教育を受けたのか,後ろ向き研究とかでネタは転がっているのではないでしょうか。また,臨床実習または新人〜5年目までのルーブリック評価開発とか,あまりやっている人が少ないぶん,ニーズは高いと思います。


以上,ちょっと書くつもりが長くなってしまった…(笑) 

最後まで読んでくれた方は少ないと思いますが(笑) ありがとうございました。






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