今日は22時に寝て2時起き.夜なよなブログ書いています.
さて,今月号の機関誌「作業療法」(31巻2号 2012) はお手元に届きましたか?
ボスが「卓袱料理と作業療法」というタイトルで巻頭言を書いています.
これが超面白かった.ボスの熱い思いを,ぜひ皆さんも読んで欲しいです.
まず長崎料理への熱い思い(笑)
ボスは長崎が大好きで,特に長崎の食べ物には妙なプライドを持っている(笑)
でもそれくらい,長崎の飯は旨い.
沖縄人は沖縄以外の46都道府県を「内地」と呼ぶので,
僕も初めて沖縄を出て長崎に就職した時には,「内地」の飯はうまいなぁと思っていた.
しかし神奈川に来てから,「あ,あれは長崎の飯が美味かったんだ」と思った.
神奈川県民には悪いけども,長崎の飯は美味い.
ボスはその熱い想いからか卓袱料理の説明に紙面の半分くらい使っていて,
途中「コレはどうなるのか?」とハラハラしましたが(笑),
ちゃんと最後にちゃんとまとめてくれました.
卓袱料理とは,貿易が盛んだった長崎が,
諸外国の料理や食べ方を巧みに組み合わせた,独自の「長崎伝統料理」である↓
ボスはこの卓袱料理とからめて,「日本型作業療法」を提案している.
"日本の作業療法は社会保障制度のもとで独特の発展を遂げてきた.
つまり医療機関で働くOTの割合が多く,地域のOTが少ない.
もっと地域で働くOTを増やしていく必要がある.
でも,その一方で日本の現状を前向きに肯定した上で,
諸外国で実践されている作業療法の良い部分を積極的に取り入れた
「日本型作業療法」を定義,構築していくことが必要であると.
医療機関で働くOTが多いからこそ,
医療モデルで何ができるか,何をすべきか世界に発信することができると思っている"
という感じの内容だった.
読んでてハッとしたし,鳥肌立つくらい感動した.
ボスの「日本の作業療法」への熱い思い.
僕のボスへの熱い思いに比例して前置きが長くなってしまったが,
今から「日本型作業療法」について書こうと思う.
実はここからが本番です(笑)
多くのOTが考えるリハビリテーションの理想は,以下の図の上段のイメージだと思う.
Drは命を救ってくれた.OTは人生を救ってくれた.という公式.
一方で現状を表しているのが下段.
急性期からPTOTに診療報酬上の差別があまり無いので,
PTのみならずOT自身も持っているOT中途半端説(笑)
なのでOTの特徴を活かすためには,みんな地域に出ようぜー!という
OT協会が推奨した想いだけの計画からも分かる通り,
OTは地域で働くことに意義があるというロジックになる.
しかしながら,現状は回復期の診療報酬が改訂したことで,
逆に病院勤務のOTが増えたという喜劇的な結末を迎えそうな予感.
そもそも,「地域OTが増えたらOTがOTらしく働ける!」
という仮説が僕はおかしいと思うんだよね.
色んなOTと話す機会があるけど,まとめるとこんな感じ.
→地域のOTは,回復期のOTが機能訓練ばっかするから困る
→回復期のOTは急性期のOTが機能訓練ばっかするから困る
→急性期のOTは患者さんがリハ=機能訓練だから困る
おいおい,みんな他人のせいかよ(笑)
図にするとこんな感じ.
もう一般市民が「リハ=機能訓練」と思っていることは,
メガネさんたちの先行研究からも分かる通り,当然のこと.
最初からリハビリテーションのベクトルは図の通り下のほうを向いている.
何もしなければ下向きに行くことは分かってる.
だから,いかに上の矢印のほうに向けていくかがリハビリテーションの役割だと思う.
って考えると,図の通り早い時期に取り組んだほうが効率良いはず,というのが僕の仮説.
もちろん健常なうちからリハビリテーションリテラシーを持ってもらうのが良い
この図からいくと,生活拡大期(いわゆる維持期)にいくらOTが増えたからといって
上向きにするのは超難しくなる.
だって地域でOTらしいOTは実はしにくいことあるよね.
介護保険が商業化して,生活拡大期に皆にサービスが行き届いたのはすごい良いこと.
なんだけど,現状はサービスを切れなくなったというか,むしろ利用者の取り合い(笑)
そのため,内容はどうであれ利用者の希望に応えるしかないという制約がある.
「自分はOTだからその希望には応えられません」なんて,
藤原先生くらいOTに命かけている人か,
空気を読まない(読めない)琉球OTさんくらいしか言えないのである(笑)
急性期や回復期で,うまい具合に図の上段の矢印にベクトルが向いた人は,
リハビリテーションとは何かって知ってるから介護保険の利用の仕方もうまいし,
そもそも介護保険自体使ってないかもしれない.
でも介護保険を積極的に使う人は下段になっている人が多いのでは?
下段の人は,では引き続き機能訓練でお願いします,となる.でもOTは断れない.
そう考えると,もちろんマンパワーは重要だけど,
地域にOTが沢山いたところでOTらしい仕事ができない.
地域にいるのにOTらしく仕事ができない... それってどうよ
そこで,もう一度この図を見てみよう.
さっきはネガティブにみえたこの図が,
ものすごいポジティブに見えてくるから不思議なもんだ.
そう.諸外国に比べて「最初から」OTがPTと同じ割合で関われるってことは,
リハビリ人生を作らないという,すごいアドバンテージになる可能性がある.
そもそも,急性期,回復期,維持期という考え方自体が,
障害に焦点を当ててる考え方なんだよね.
いつなんどきでもOTは作業に焦点を当てる.
作業に焦点を当てるというと,
その作業自体の練習をしなきゃと思う人も多いと思うけど,
別にそれは手段だから何でもいい.
大事なことは早い段階で「目的」を決めること.リハをする目的を決めること.
それを一緒に考えることから始めないと,手段が目的化しやすい.
専門職からすれば,「もむこと」はその人の「何か」ができるための手段なんだけど,
患者さんはそう思っていない.
「もんでもらう」ためにリハを受けに来る,という構図になりがち.
リハは特に手段が目的化しやすい状況にある.
それを改善するのもリハにおけるOTの大事な専門性だと思っている.
「孫と一緒に散歩」するために歩く練習をする
「友達に会う」ためにもんでもらう
「旅行をする」ために体力をつける
それをOTが引き出して,
そのためにDrは何をする,
Nsは何をする,
PTは何をする,
SWは何をする,
家族は何をする,
というコーディネートを「OTがする」
というのが僕の中での理想的な作業療法だし,
きっと皆も思い描いている作業療法だし,
諸外国にはその発想すらない作業療法だし,
日本でしかできない作業療法だと思う.
このペースでOTが増えれば,特に対策をねらなくても地域にOTは増える.
今は後手後手のOTでも,その時期が来たら勝負.
でも今からできることは単にマンパワーを増やすことだけに頑張るのではなく,
いかにスムーズに医療から地域につなげるためのOTの流れを作んなきゃダメ.
それが地域專門のボスの言いたいことだと思っている.
それが諸外国にはできない「日本型作業療法」を発信できる可能性があるし,
地域だけではなく急性期に需要拡大だってできるしね.
そう.この図は諸外国の良いとこ取りをして,最初から最後までOTが関われるという
日本独自の卓袱型作業療法が提案できる色んな可能性を秘めていると思うんだよね.
追伸
実は卓袱料理は高くて食べたことがないので,
今度長崎に行ったらボスと食べにいこうと思いますw
冨山と申します.
返信削除先生のブログを拝見しまして,非常に考えさせられました.特にOTが地域に増えてもOTらしいことはできないのでは.私も訪問に関わる機会があり,自分はOTとして何をしてるんだろうと考えたこともありました.そのため少しでもOTとして無理やりでもその人の作業と結び付けていまやっていることは意味があると勝手に納得していた気がします.手段が目的化しやすい,本当にその通りですね.早い時期から対象者にとって必要な作業を対象者と共有して,そのために何をしていく必要があるのかを対象者と一緒に考えていけるよう関わっていきたいと思います.すてきなブログありがとうございました.
冨山様 tomori です.ありがとうございます.やっぱ地域はマンパワーだけでは片付かない問題ありますよね.せっかく早い段階からの関われるので,早めにOTらしい関わりが出来るといいですよね.
削除広島国際大学の國貞です。作業療法とは何かが理解できていれば、どこで実践しても対象者をwell-beingにつなげることができるのだと思いました。
返信削除國貞様 tomori です.おっしゃるとおりですね.その関わりが日本ではできる土壌にあるという強みを活かしてみたいですね.
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