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さて,このブログでも何度かOccuaption-based practice(OBP)について取り上げていますが,先日Dr. Polatajko のEditorialを読んで,OBPは今過渡期にあるのかなと思いました.
まずDr.Polatajkoは,残念なことに,OBPは言葉による表現(レトリック)と実践に乖離があるのでは?という問題提起し,OBPはその概念と一致していない実践を制限しているように思うと.そして,OBPは,機能障害を少なくするために治療的な活動を使うし,作業的公正やインクルージョンを促進するために主張する,ことも含まれると述べています.もすこし具体的例として,1)着替えの練習,2) 車いすのクッション調整,3) 職場環境調整の働きかけ,これらは全てOBPに含まれると.
すなわち,OBPとは実際的な作業をすることを通して作業療法を展開する,ということ以外にも,アクティビティを使って治療することや,環境に働きかけることも,すなわちOBPということですね.
その後,作業の階層性構造を示すTaxonomic Code of Occupational Performance (TCOP) について触れ,その下層の遂行部分では,作業からほど遠いと言われるけども,機能障害は活動や参加を制限するし,機能障害の軽減は活動や参加を促進するので,機能訓練はOBPにおいて妥当な支援である,と述べられています.もちろんクライエントが望む作業の延長線上にあるならば,という前提において.
また,こういう議論は,理論にもとづき,「エビデンス」によって支持されるべき.だから研究が必要だと.そして話題は車いすのクッションに戻り,車いすのクッション調整やってもいいけど,エビデンスは? 褥瘡については沢山あるが,これでは不十分.つまり,作業遂行がどう変わったのか,というアウトカムが必要だと.
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他にもいろいろ示唆が得られますが,僕視点でまとめると,
OBPは誤解されている.OBPとは幅広いもの.
機能障害は作業に影響するので機能訓練は大事.
こういう議論は,理論にもとづき,研究によって判断していきましょう.
その際,アウトカムは作業遂行にしましょうね.
って感じですかね.まとめると,ごく当たり前のことですよね.あはは(笑) でもDr. Polatajko が開発した支援方法→Cognitive orientation to daily occupational performance (CO-OP)は,患者さん自身に考えてもらうことを促す支援ですので,通常のハンドリングで受身的な機能訓練とは異なります.そこは勘違いしないように,と思います.
ちなみに僕の機能訓練に対するスタンスはこちら アイデンティティ・クライシスの頃の機能訓練のイメージとは異なるように思います.
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僕は現実主義のAB型なので,どうもこの手の議論に馴染めません.せっかちなんでしょうね.practiceをどうすんんだ? エビデンスは?と,先走ってしまいます.反省すべき点でもありますが.
その観点から,僕は作業療法が迷う理由はアウトカムの不備にあると思っています.作業療法は多様性を受け入れる支援なので,介入は状況にあわせてどんなことをしてもよい.でも最終的には,クライエントが望んでいる作業の遂行レベルで判断しましょうね,というコンセンサスがとれていない.ていうか,妥当で共通のアウトカムが無い.よって介入が良いのか悪いのか判断できない.これが作業療法の一番の問題だと思っています.
カナダはこの点において,COPMを作っています(皆が使っているかは分かりませんが).COPMという成果物はもちろんですが,COPMを作るまでの過程,つまり有識者が集まって共通のアウトカムを創ったというプロセスこそ,いま日本がカナダを参考にすべき点だと思います.生活行為向上マネジメントも,いま全国の有識者が集まって議論を重ね,少しずつですが良い方向に向かいつつあると思います.今後どうなるとりあえず静観しています.
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さて,Advancing OBP... 現実主義な僕らADOC project は何をするか.OBPをめぐる論争.これは日本臨床作業療法学会に引き継ぎます.齋藤さん,藤本さん,竹林さん,最後にまとめは澤田会長.全て現役臨床家による講演.しかし何より100を超える演題.参加者の多くが発表するという,超参加型の学会です(笑)
またOBPをどうやればいいのかじっくり考えたい人には事例本です.これはOBPの実践をどうすればよいか侍さんがとてもわかり易く書いています.そして真似できる,真似したいレジメが沢山あります.日本臨床作業療法学会での販売を目指し,いよいよ大詰めです.いま表紙や帯をどうするか検討しています(笑) 2月に編者で集まって,最終チェックを行う予定です.
機能訓練をOBPでどう活用すればいいのか.僕らの仕事では,ADOC for handです.機能訓練自体が問題ではないんですよね.生活で機能を上手く活かせていないことが問題なんですよね.患者さんの行動変容を促すために,院生のohnoくんに連日頑張ってもらってます.先日イラストレーターとの打ち合わせが終わり,かなり遅れていますがちゃんと進めていますよ(苦
「楽しくOBPができるように」
僕らADOC projectの仕事は,全てここにつながっています.そのビジョンに向けて,今後も皆でいろんな取り組みをしていきたいと思います.ご賛同いただける方は,ぜひ一緒に! その仕掛けももう少しで発表できると思います.
なんか最後は決意表明みたいになってしまいましたが(笑),最後まで読んで下さりありがとうございました.
OBPとOFPの違い、そのどちらにも含まれないけど、OTとして大事な介入があること。思いの傾聴とか環境調整なんかは後者に含まれると思います。アンフィッシャーさんが分かりやすくまとめてますよ。お邪魔しました。
返信削除ありがとうございます.
返信削除Fisherの論文は,OTIPMなどこのブログでもなど何度かとりあげています.
http://adocforot.blogspot.jp/2013/04/tomori-lab-1.html
またご意見いただければと思います.よろしくお願いいたします.