2013年5月25日土曜日

やるかやらないかのちょっとした違いなんです.

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今日は誕生日。tomori です.朝から運動会の席取りのために小学校に並んでいたのですが、開門と同時にディズニー並みにダッシュする父親たちをみてドン引きし、岩陰のひっそりしたところに陣取りました。

さて、先日僕の授業で、侍さんのスライドや動画を活用させてもらいながら学生に面接のやり方を教えました。

「なるほどー、作業療法の説明こうやってするんですね!」とか、「私も現場にでたらSDMをやってみたいです!」というのが大方の感想でした。おう!未来は君たちに任せた!といつも思います.

ただ,その中でたった1人だけ、「私も実際に家族や友だちに作業療法の説明をやってみました。OTRの言ったことをメモして私の口からそのまま言っても伝わらないんですね。もっと自分なりに作業療法を理解しなければ」とありました。

20人中1人なので,5%ですね.学んだことを実際やってみる人の割合.極論,将来的に伸びるかどうかは,能力が有るか無いかではなく,やるかやらないか.そこの違いは大きいと思います.逆に能力が高いと,やる前に先読みしすぎて結局出来なくなるかもしれません.低いので分からないのですが(笑)

また,昨日から琉球OTさんが九州に巡業しているようですが,その講演を聞いた作業療法士の方が,僕達が企画している老健の研究に参加希望を出してきました.「興味はあったものの,4月からの老健勤務で,介護保険のケアプランの縛りの中でどう作業療法をするのかに戸惑い、研究なんて…と思ってました。でも琉球OTさんに背中を押していただきました」.と.

昨日僕も,老健勤務のOTの方と話してきました.老健での経験は浅く,一人退職し,不安はあるけども,研究に参加したいと.



ーーーーーーー
僕は GAKUさんの「昨日のNo,明日のYes」という唄が好きです.




「明日の Oh Yes Yesの為のベスト その瞬間はです たった今です
 やるかやらないかのちょっとした違いです」


やるかやらないかは,ちょっとした違いなんです.
そのちょっと,ほんのちょっとを毎日積み重ねたいと思う誕生日でした.


最後まで読んでいただきありがとうございました.



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Bank Band

昨日のNo, 明日のYes

作詞:GAKU-MC
作曲:森俊之

ほっとくといつも君は全てを一人で背負うようなとこがある
だからそういう意味だ 頑張りすぎのようだ どことなく
さあ感じるこのビートにその身をゆだねてもいいのに
もっと take it easy 気楽に行けばいい

寝不足のその瞼 隠そうとする帽子 目深にかぶって
歩く かなり 脇目もふらずがむしゃらに
心配ごとはつきないほうだね いつの間にか社会人と呼ばれ
君を理解する人は nobody 不条理なこの街にもう駄目
たまの休みあの子とすれ違って することもなく寝ちまって
しまいにゃ寝違えて なんかぱっとしねえな
まるで三日目の二日酔いみてえだ
あの日描いていた大人の理想 かけ離れて 流れて ここにそう
たどり着いた場所で己に問う 鏡の中の君はだれでしょう

昨日の Oh No は 明日の Yes 変えるのは君なのです 君なのです
コケるのは何度だってかまわないのです
昨日の Oh No は 明日の Yes 変えるのは君なのです 君なのです
最後に笑っていればそれでいいのです

若気の至りだったねと アルバムの写真取り出して
そんな時もあったねと 振り返る タバコの煙くゆらして
あれからどれくらいの時が流れたか 君はだれ
変わり果て 心まで疲れ果て ため息ばかりでるのはなぜ
精一杯の努力とか一生懸命が茶化されるこの時代にあえて宣言
固定観念や偏見 コンプレックスさえも武器にして叫んで
いつの日かつかむはずの成功と栄光 迷走し続け いざ行こう
過去の全ての失敗と失態を「経験」と呼び直すためにある今日

昨日の Oh No は 明日の Yes 変えるのは君なのです 君なのです
コケるのは何度だってかまわないのです
昨日の Oh No は 明日の Yes 変えるのは君なのです 君なのです
最後に笑っていればそれでいいのです

出会いと別れを繰り返しまた人は今日もどこか向かい何か探す
探す 探し物が何かも知らず
さあ行こうか とまらずに どこまでも 愚痴漏らさずに
さあ行こうか とまらずに コケるにしたって前のめり
出会いと別れを繰り返しまた人は今日もどこか向かい何か探す
そんで とんで ぶっとんで勢いつけてこうぜ

明日の Oh Yes Yesの為のベスト その瞬間は今です たった今です
取り返しなんて多分つくはずなんです
明日の Oh Yes Yesの為のベスト その瞬間は今です たった今です
やるかやらないかのちょっとした違いです
昨日の Oh No は 明日の Yes 変えるのは君なのです 君なのです
コケるのは何度だってかまわないのです
昨日の Oh No は 明日の Yes 変えるのは君なのです 君なのです
最後に笑っていればそれでいいのです


2013年5月24日金曜日

地域は作業療法の持ち場になるのか?

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二歳になった次女の横暴さにビビってます。tomoriです。今朝は寝てる三女のオムツをいつの間にか穿いで布団をウンコまみれにするし、1人で三階から階段で降りて行き近所の人に保護されてるし、帰宅してきた僕を三女が寝てるから「しーっ!」と大声で迎えにきて、その直後に転んでテーブルの角にみぞおちを打って全身全霊で泣いてしまうとか。これ全て今日の話しです…


さて今日は地域作業療法について、書かせて頂きます。

地域は作業療法が担うべき。近頃よく耳にします。賛成です。でも現場そうなってません。そこで地域に何かテコ入れをしようという話になりますが、僕は地域だけにテコ入れしてもダメだと思うとですよ。

2000年以降、介護保険によって地域に作業療法士が増えました。しかしサービスが商業化したため、利用者さまの仰せの通りの作業療法を提供しなければいけないのです。通常、利用者さまは機能訓練を希望します。作業療法士はそれに応じます。サービスという観点からは、その契約は十分に成り立ちます。寿司を食いたいというお客さんに、寿司を出すのは当然のことです。介護保険後の出来事ですので、マンパワーが主な問題では無いような気がしています。人はかなり増えたのに…

事実、僕が行ったアンケートでも、作業を使っていない介入(つまり徒手的な介入)が1番多かったのは、急性期、回復期、維持期の中で、維持期がダントツに多かったです(未発表データ)。

それは真のサービスでは無い!と、いくら周りが言っても、それは本人が1番分かってるのです。理想を語ったり、それでも自分には出来たと武勇伝を語ることは、逆に本人を苦しめるだけになりかねません。まぁ苦しまない方もいるでしょうが…

一方、現在7割近くの作業療法士が病院に勤務していると言われています。逆に言えばこれはチャンスにもなります。つまり地域と比べ相対的にマンパワーに余裕がある病院で、早くから作業や在宅生活に焦点を当てた作業療法を展開していれば、地域の作業療法も今よりもずっとやりやすくなると思いませんか?

今こそ、地域と病院がもっともっと近づくと良いのではないでしょうか。地域は作業療法で、というより、急性期から作業療法で。いや、いつでも作業療法で!

保険に入ってない人が多かったり、作業療法士の数が少ない諸外国では、リソースを地域に注ぎ込むのはいいでしょう。しかし国民皆保険かつ作業療法士の数が多い我が国では、いつでも作業療法!でいけるでしょう。

本来、作業療法が障害ではなく作業をターゲットにしてるなら、急性期も維持期も無いでしょうに…各持ち場で粛々と作業療法をやれば良いのではないでしょうか。

粛々と作業療法をやれって、じゃ作業療法ってなんだよー!と言われそうですが、ぼちぼち寝る時間なんで、寝ます。

最後まで読んで頂きありがとうございました。



2013年5月22日水曜日

7月に,山形で,侍さんと二人で講演します!

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子どもと15分も遊べない人が、仕事 or 家庭 で悩むこと自体おかしいとカミさんに応援されました。tomoriです。
お、応援してくれてありがとう。

さて、七月に山形の作業行動研究会さんより、講演のお声かけいただきました。ありがとうございます。

ん? 山形?  初孫出羽桜だし、と全て酒とセットで記憶されていましたが、そもそもどこなんだ? 移動は飛行機か? と思って調べたところ(山形の方ごめんなさい)、なんと新幹線で福島経由ということが分かり、侍さんにも会いに行こうかなと話してました。

そこで日頃からプレゼン思考の僕は、いや待てよ、聞く側なら侍さんの話も聴きたいな、いやこの際聴かせた方が良いと思いたち、侍さんに予定を聞いてみたらお子さんの面倒を見ないといけないと言ってたので聞き流し(笑)、主催する先生に僕と侍さんは2人で一つなので一緒にお願いします、あ,侍さんは子連れですがiPadで映画見せますのでお願いします、とかよく分からないメールを送り(笑)、お二人にご快諾頂きました(笑)。

こんなに人のいう事を聞かない人たち(いつのまにか2人)なら、作業に焦点を当てた実践など、そうそう障壁を感じないだろうと思うかもしれませんが、それは誤解です(笑)山形の皆様の第一に考え、第二に僕たちが楽しめるように、僕たち2人でやらしていただきます.





テーマは,作業に焦点を当てた実践ができるまでに僕たちがやってきたこと,ADOC,トップダウンについてです。イメージは長崎名物トルコライス!!.ピラフ,カツ,ナポリタン,カレーソースを基本形とし,その他のトッピングもあります.つまりてんこ盛りです(笑)



僕らは2人で1+1=3です。といっても、侍さんは料理で,僕はフォークです(笑)。当日は彼のプレゼンが引き立つように頑張りますので、ぜひ遊びにいらして下さい。いやー、福島以外の初の東北 山形.楽しみですー。

申し込みの方はこちらからダウンロードをお願いします.



最後まで読んでいただきありがとうございます.

2013年5月19日日曜日

ADOCメンバーが気を付けているプレゼンテーションのコツ

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ただでさえ睡眠障害なのに、カプセルホテルにいます。tomori です。ていうか、浅草で三社祭があって、ここしか空いてなかったんです。

さて、昨日は銀座のAppleストアで行われた、医療3.0で有名な杉本真樹先生の、プレゼンテーションに関するセミナーに行って参りました。臨床家がハンドリング技術が必要なように、教育研究者はプレゼン技術が必要だと思うからです。

得るものは沢山ありましたが、うちらに関連したものを主に3つあげるならば…

1) 普段からプレゼンテーション思考を持つ

自分ならどう表現するか、伝えるかを常に意識し、短くてインパクトのある言葉を考えたり、写真など撮っておいたりすると、すぐプレゼンできます。これは良く分かります。琉球OTさんも常に写真を撮ってますしね。みんなTwitterなどでプレゼンの練習しています(笑)神戸の研修会のポスターとか、2人のプレゼンテーション思考のたまものだと思います。



2) 常に相手や社会の立場に立って考える

どうすれば目の前の相手や、その背後の社会に貢献できるのか、常に考える事ですね。結局プレゼンは方法ではなく中身です。その中身というのは、相手や社会にとって価値がある内容です。内容がないと聴いてもらえませんし、聴いても忘れられます。また相手に貢献したいと思えば、相手の立場になって、プレゼンの資料やプレゼン中の細かい配慮もするはずです。相手の立場で考える。これが良いプレゼンをするコツでしょうね。


3) Why, How, Whatの順番で伝える

普段から準備を怠らず、相手にとっての価値が生み出せたら、この順番で伝えます。これは僕、琉球OT、侍OTがプレゼンする時には必ずやることです。詳しくはサイモン・シネックさんのTEDで見れますので。これ必見ですよ。

僕らはプレゼンを依頼されると、依頼者に必ずそのプレゼンの目的を聞きます。病院とかでやるときには、管理者さんに、聞き手がどうなって欲しいと思っているか、とか聞きます。好きなこと適当に話して下さいというのは、依頼者は気を遣っているつもりでも、話す側としては逆にやりにくいんですよね。プレゼンテーション思考を持ってるならなおさらです。琉球OTさんは目的が出てくるまで打合せするとか。それがWhyです。まずwhyの共有です。ひどい時はプレゼン前日までwhyについて議論します。それからどんな方法があるのかのHowがきて、具体的に何をするのかのWhatがきます。侍さんも書いています。

例えば、これが逆だった場合… 
ADOCは良いです!(what)  ADOCで作業に焦点を当てた実践が出来るようになります(how)。それできっと作業療法は楽しくなります(why)」という感じでモノ whatが前面にきます。だいたいモノを伝える時はそうなります。これがどんなに優れているのかの理由を説明したくなります。でも僕は常々言ってますが、ADOCより優れたツールが出たらそっちを使います(笑)大事なことはモノじゃないんです。なので、ADOCの事を話してくれと頼まれても、僕たちのプレゼンでまず最初にADOCがくる事はないですし、そもそも使い方や細かい説明もしません(笑)

じゃ、僕らがどう伝えてるか…
「作業療法はこんな風に楽しくできます(why)。そのためには作業に焦点を当てた実践をすることが大事です(how)。その方法の一つとしてADOCがあります(what)」と。

まず大事なことは、これを使うとどうなるのかという聴き手の未来をあたかも見えるかのように、先に伝えます。うちらはよく動画や静止画を使って未来を見えるようにします。whyから先に伝えます。whyが共有できれば聴き手は動きます。

他にも色々ありましたが、とりあえずここまでで失礼します。

あわせてこの記事もどうでしょうか
分かりやすいプレゼンをするために(大島武先生)

最後まで読んで下さりありがとうございました。

以下,僕が参考にしているプレゼン本です.


僕も結構読みなおしています.そして去年は,琉球OTさん,侍OTさん,ちびっ子OTさんなど,仲間に買わせました(笑).プレゼンする機会がある方はぜひ.


2013年5月18日土曜日

精神科でのADOCの活用 〜パート2〜

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とんがりcorn 好きです.tomoriです.

さて,今日は精神科の勉強会でADOCについてお話させていただきました.このブログでも何回か取り上げていますが,精神科でOBPをするにはは様々な障壁があると思います.

 精神科でのADOCの活用
 精神科でのADOC
 「PTとOTの役割は明確です.OTは作業を使います」

集団療法しか算定できないこと,個別の面接の時間が取れないこと,長期入院だと何かをしたいという意志も乏しくなってくること,話を聞いても妄想的で止めどなく膨らんでいくこと... できない理由を挙げたら止めどなく出てきそうです.

でも今日集まってくださった数名の方々は,いろんな工夫をしつつADOCを活用してました.

  • どうにか時間を作ってADOCを実際に使ってみると,会話だけでは引き出せない作業レベルの話ができたこと
  • CLの行動の意味が理解できたこと
  • 他職種が持っていた断片的な情報がまるでパズルのピースをはめていくように繋がってきたこと
  • これまでプログラムを選んでもらっていたけど本人の希望などからプログラムを選択するようになったこと
  • まずiPad自体に興味を示してくれること
  • 私物のiPadを使っており,パスワードがあるけど心配.早く病院で購入してもらいたい
  • 同僚のOTから注意されないか心配
などなど,精神科で実際にADOCを使ってみて,出てきたメリットや課題についてディスカッションできました.

あと,僕の話では,ADOCはCLとパートナーの関係になるような,Shared decision-making(SDM)を意識して作っていることを強調しました.精神科特有の参加制約というか,様々な障壁.一見病院側の都合のようなこともCLと共有し,全てひっくるめてCLと一緒に解決していくようなSDMが重要ではないでしょうか.パートナーとして.

とか言ってると,リカバリー全国フォーラムという当事者も参加するデカいイベントがあるらしく,今年のテーマがSDMだそうです.作業療法士もSDMについて何かしゃべってほしいと言われているみたいで,ADOCを紹介していいですかね?とかいう相談もありました.その方がMacユーザーだったので,速攻でスライドあげる約束しました(笑)

いやー,しかし精神科のOBPも激アツです.この勉強会は,とりあえずやってみようぜ的な感じの第1回目だったので,名称や窓口とかまだ決まっていないと思うのですが,今後も定期的に開催するようです.基本オープンらしいので,ご興味のある方はとりあえず僕までご連絡ください.担当者へ繋ぎますので.


adoc.projectアットマークgmail.com です.

最後まで読んでいただきありがとうございました.


2013年5月16日木曜日

自分が得意な仕事にフォーカスする

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ナマケモノ党の酒蔵大臣 tomori です。今日はそんな僕の仕事について書いてみます。

僕は注意散漫で、なおかつ健忘症も兼ね備えているので、何かをしながらも自分が今何をしてたのか、よく分からなくなって、しまいにはなんくるないさとか、自分に都合の良いポジティブ用語を並びたてて諦めるタイプです。

加えて大学の仕事は自由度が高く、仕事の内容や範囲は自分で決めないといけません。例えば研究。どこまでやっても終わりは無い。答えも無い。何をするかも自分で決める。なので自分がどの位置にいるのか、どこに向かっているのかホント分かりにくく、たまに不安になってしまいます。

なので、一日の始まりにはタスクリストを作ります。今朝もしました。アプリも含め色々使ってみたけれど、無印良品のタスクリストに手書きして、タスクが終わったときにはぺんてるの赤字マーカーで、ビーって線を引くのが快感です。俺って仕事してる〜と実感できます(笑)




具体的には、だいたい一週間単位でその週にやる仕事をリストアップします。そして一日の細かいタスクに落とし込みます。まず一日8時間労働の480分として、それから会議や授業などノルマの時間を引き、自由に使える時間を算出。その時間内で今日やる事を書き出します。

僕は一日のタスクをきつきつにしません。ヒトは時間の見積もりが甘く、これくらい出来るだろうとたくさん入れたがりますが、結局出来ずに敗北感を味わうことが多いですよね。僕もそんな経験を散々してきたので、一日のタスク量は少なめです。

話がそれましたが、言いたい事は時間管理術ではないんです(笑)

僕は基本的にタスクが少ないんです。ていうか、自分にしか出来ない事、得意な事以外は、あまりやらないようにしているからです。

だいたい仕事はチームで動いていますので、苦手な仕事は得意そうな方にお願いしています。その代わり、得意な仕事はかき集め、全力を尽くします。投資もします。得意な事は楽しいので、あまり苦になりません。また、一見分野は違っても根本は似たような仕事になるので、さらに加速的に出来るようになります。そうする事でチームにも貢献できます。

僕も苦手な仕事をしていたときはそうでしたが、苦手な仕事をどんなに頑張ったとしても、得意な人にはかないません。苦手な人が一年かけても出来ないことを、得意な人は一日で出来ることがあります。そんなもんです。得意な人を舐めてはいけませんし、勝とうなんて思わないほうがいいです。苦手なことは、最低限出来るくらいで良いのです。

でも同じように、自分にも得意なことが必ずあるはずです。得意なことにフォーカスすれば、僕のように無能なナマケモノでも、米粒ぐらいの一部分に限っては、人並み以上の仕事ができます。それ以外のほとんどはダメです。すみません。

でも僕は社会に貢献するために、これからも得意な仕事にフォーカスしていこうと思います。苦手なことでは貢献どころか足を引っ張るだけなので…

追記 僕がこうして余裕を持てるのも,いつも労を惜しまず協力してくれる仲間のおかげです.感謝感謝感謝です.僕にできることでお返ししていきたいと思います.

最後まで読んでいただきありがとうございました。

さて、ブログを書くというタスクに線を引くとするか(笑)


2013年5月11日土曜日

tomori lab 文献抄読会(3) 作業療法の定義は約30年変わっていません.

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院生のohnoです.
前回の記事(作業療法のこれまでとこれから)では,日本における作業療法は国内外からのあらゆる要因の影響を強く受けながら発展を遂げてきたことについて書かせて頂きました.今回は「作業療法」そのものを意味する【作業療法の定義】に関して私見を書かせて頂きます.

定義とは「ある概念の内容やある言葉の意味を他の概念と区別できるように明確に限定すること(大辞林)」とされている.医療あるいは保健,福祉の領域の中で対人援助職である作業療法士にとって,クライエントとの関わりはもちろんのこと他職種との関わりが避けては通れないものである.つまり,作業療法が職業としての専門性を他職種と差別化して,クライエントに自身の役割について説明するためには,定義について十分な理解を深めることが重要であると考えられる.


図は,日本と世界作業療法連盟(World Federation of Occupational Therapists;以下,WFOT),それぞれの作業療法の定義の改定について記したものである.WFOTにおいては作業療法に求められるニーズの変化や,その時々の社会情勢などに応じて作業療法の定義がこまめに修正されていることが分かる.

※ただし,WFOTの定義に関する記載に関しては,ハンドブックや用語集などに記載された作業療法の概要について言及されている説明や声明なども併記している.各年のWFOTによる記述をページ下部にまとめて記す.



WFOTにおける作業療法の定義の変遷(下記参照してください)


1962年の時点では,作業は機能再建を図るための手段的利用として用いられると記載されている.これは当時の欧米で医学的モデルに基づいた還元主義的な作業療法が全盛であったことを強く反映しているものと思われる.

1974年及び1984年には,作業療法の目的に個人のニーズの達成に関する記述が加えられ,機能改善に終始しないことが示された.

1993年の改訂では作業療法の目的に「participate(参加)」が用いられ,主体的な参加によって健康が促進されることが提言された.

2004年の改訂では,これまで一貫して使用されてきた「function(機能)」がなくなり,作業が持つ意味が,治療媒体としての手段的利用から,「作業を通して健康を促進する」という目的的利用へと変わった.また,作業療法の成果が人々の参加によって判断されるということが強調されるようになった.つまり,作業療法が作業(occupation)に関して展開されることを宣言することで,他職種との役割の差別化が図られている.

2010年の声明文では,クライエント中心client-centredという言葉が新しく登場した.
このように,WFOTは外部から求められるニーズの変化に応える形で,定義のマイナーチェンジを繰り返しながら職業としての専門性や独自性の確立を図ってきた.



日本における定義の変遷

日本で初めて作業療法の定義が明文化されたのは,1965(昭和40)年に制定された理学療法士及び作業療法士法である.

第2条 第2項
作業療法とは,身体及び精神に障害のある者に対し,主としてその応用的動作能力又は社会適応能力の回復を図るため,手芸,工作その他の作業を行わせることをいう.
(理学療法士及び作業療法士法 昭和40年6月29日 法律第137号より 抜粋)


その20年後の1985(昭和60)年には,日本作業療法士協会が作業療法について以下のように定義づけた.

身体または精神に障害のある者,またはそれが予測されるものに対してその主体的な活動の獲得をはかるため,諸機能の回復・維持および開発を促す作業活動を用いて行う治療・指導・援助を行うこと.
(社団法人本作業療法士協会第20回総会時承認,昭和60年6月13日)


 また,近年になると多種多様な医療スタッフが,各々の専門性を相互に連携・補完し合うことで,患者の状況に的確に対応した医療を提供する「チーム医療」に関心が寄せられるようになり,医師以外の各医療スタッフが実施することが推奨される業務内容の具体例について記した報告書「チーム医療の推進について」が,2010年に厚生労働省によって発表された.

作業療法の範囲
理学療法士及び作業療法士法第2条第2項の「作業療法」については,同項の「手芸,工作」という文言から,「医療現場において手工芸を行わせること」といった認識が広がっている.
以下に掲げる業務については,理学療法士及び作業療法士法第2条第1項の「作業療法」に含まれるものであることから,作業療法士を積極的に活用することが望まれる.
・ 移動,食事,排泄,入浴等の日常生活活動に関するADL訓練
・ 家事,外出等のIADL訓練
・ 作業耐久性の向上,作業手順の習得,就労環境への適応等の職業関連活動の訓練
・ 福祉用具の使用等に関する訓練
・ 退院後の住環境への適応訓練
・ 発達障害や高次脳機能障害等に対するリハビリテーション
(医政発0430第2号及び第1号,2010年4月30日,一部抜粋)


作業療法の専門職としての役割について議論されることはあっても,日本における作業療法の定義は,1985年に日本作業療法士協会によって定義が作成されて以降,現在に至るまでの約30年もの間に一度も改訂されることがなかった.

1965年または1985年に定義が作成された当時と比べると,現在の作業療法,そして社会からの作業療法に対する要請も劇的に変化している.特に2000年に介護保険が施行され,作業療法士の職域は地域へ広がった.そして現在,日本作業療法士協会は生活行為向上マネジメントを掲げ,今後他職種と連携しながら地域へとさらに職域を拡大していく方針を示している.にもかかわらず,現行の定義は「諸機能の回復・維持および開発を促す作業活動を用いて行う治療・指導・援助」という作業の手段的活用のみが記載されており,WFOTの定義にあるような目的的活用については明記されていない.そこに方針と定義のズレが生じている.

再掲するが,定義とは「ある概念の内容やある言葉の意味を他の概念と区別できるように明確に限定すること」である.今後さらに社会からの要請は多様化し,私たちの職域は変化するだろう.そのなかで,私たち作業療法士の専門性や独自性を他職種と区別できるように,定義については再考の余地があるだろう.そして今後社会情勢にスピーディに対応できるよう,定義を常に見直しするシステムの構築が必要であろう.


いつやるか → でしょ


最後に,話題はややそれるが,澤田さんも指摘している通り,現行の診療報酬制度では,医療保険でも介護保険でも,屋外での介入に対して算定基準が曖昧(基本的には禁じられている)であり,作業の目的的活用を臨床で実践するためには法改正も併せて必要である.


最後まで読んでくださり,ありがとうございました.



以下資料(WFOTの定義の変遷)




1962年:WFOTが発行したパンフレット”Functions of Occupational therapy(作業療法の機能)”には,作業療法の定義が記されている.

作業療法は,有用な機能の再建を促進するために,専門的な資格を有した作用療法士によってデザイン,適用される建設的な活動を手段として用いて,物理的およびまたは精神的な障害に対して医学的に行われる治療である.
Occupational Therapy is a medically directed treatment of the physically and/or mentally disabled by means of constructive activities, such activities designed and adapted by a professionally qualified occupational therapist to promote the restoration of useful function.
(Mendez, M. A. "A chronicle of the World Federation of Occupational Therapists 1952-1982.", p19, 1986).


1974年:定義改訂
作業療法は,選択された特定の手段を用いて行われる評価および治療である.作業療法は,一時的あるいは永続的な身体的,精神的な疾患,そして,社会的,発達的な問題を有する人々のために作業療法士によってデザインされる.作業療法の目的は,障害を予防することや,機能を最適な状態にし,仕事や社会,家庭などの環境で自立した状態で個人のニーズを達成することである.
Occupational Therapy is assessment and treatment through the specific use of selected activity.This is designed by the occupational therapist and undertaken by those who are temporarily or permanently disabled by physical or mental illness, by social or developmental problems. The purpose is to prevent disability and to fulfil the person’s needs by achieving optimum function and independence in work, social and domestic environments.
(Mendez, M. A. "A chronicle of the World Federation of Occupational Therapists 1952-1982.", p65, 1986).


1982年:WFOTが作成した用語集に記載されたOccupation Therapy Services
地域社会における作業療法サービスは,活動を遂行するためのニーズや潜在能力を評価するための手段として,あるいは日常生活における要求に対応した能力を強化するための直接的もしくは間接的な介入として,最前な健康を達成することや,個人あるいは集団,社会の発達を促進することを目的に提供される.
Occupational Therapy Services in the Community are provided to achieve optimum health, and promote the development of individuals, groups or communities, by means of the assessment of needs and potential for the performance of activities, and by direct or indirect intervention, which will increase competence in meeting the demands of daily living.
(Mendez, M. A. "A chronicle of the World Federation of Occupational Therapists 1952-1982.", p86, 1986).

1993年:定義改訂
 作業療法は,一時的あるいは永続的に身体または精神の疾患を有し,機能障害や社会的不利を抱えている人々に関連する学問分野である.専門職としての資格を取得した作業療法士は,患者の仕事,社会,個人,家庭それぞれの環境における要望に応えることや,充足感を持って生活に参加できることの促進を目的に,患者の回復や生活機能を最大限に利用するための活動に患者を療法に巻き込んでいく.
Occupational Therapy is a health discipline which is concerned with people who are physically and/or mentally impaired, disabled and/or handicapped, either temporarily or permanently. The professionally qualified occupational therapist involves the patients in activities designed to promote the restoration and maximum use of function with the aim of helping such people to meet the demands of their working , social, personal and domestic environmet, and to participate in life in its fullest sense.
(Definitions of Occupational Therapy,WFOT,1998,一部抜粋)


2004年:定義改訂
作業療法とは,作業(occupation)を通して健康と安寧(health and well-being)を促進することに関わる専門職である.作業療法の目的は,人々が日常の活動(activities of everyday life)に参加できるようにすることでQOLを向上させることである.
作業療法士は,人々の参加する能力を高めるような様々なことをできるようにしたり,参加をより良く支援するために環境を修正することによって,この(日常の活動に参加するという)成果を達成する.
Occupational Therapy is a profession concerned with promoting health and well being through occupation. The primary goal of occupational therapy is to assist people to participate in the activities of everyday life and enhance the quality of their lives.
Occupational Therapists achieve this outcome by enabling people to do things that will enhance their ability to participate or by modifying the environment to better support participation.
(WFOT 2004)


2010年:WFOTの声明文
作業療法は,作業を通して健康と安寧(health and well-being)を促進することに関心をもつ,クライエント中心の健康関連専門職である.作業療法の主な目標は,日常生活の活動に人々が参加できるようになることである.作業療法士は,人々や社会の人と一緒に,彼らがしたいこと,必要なこと,期待されることに関する作業ができるようになることをしたり,彼らの作業への関わりをサポートするために環境や作業を修正したりすることで,アウトカムを達成する.
Occupational therapy is a client-centred health profession concerned with promoting health and well being through occupation. The primary goal of occupational therapy is to enable people to participate in the activities of everyday life. Occupational therapists achieve this outcome by working with people and communities to enhance their ability to engage in the occupations they want to, need to, or are expected to do, or by modifying the occupation or the environment to better support their occupational engagement.
(WFOT 2012)


2013年5月9日木曜日

「じぇじぇじぇ〜〜!!」

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我が家の流行語は「じぇじぇ〜」.tomori です.




さて,琉球OTさんに勧められ2010年2月17日から書き始めたこのブログですが,
先日おかげさまで200000アクセスを突破しました! 「じぇじぇじぇ〜〜!!」

もちろん世の中には月200万アクセスのブロガーもいますが,今日本のOTが6万人だとすると,なかなかの数字だと思います.日本全国からアクセスがありますが,東京と神奈川が多いようです.その他,アメリカ,デンマーク,スウェーデンとかからもあるようです(笑)

拙い文章ですが,最近,「ブログで勉強させていただいています」とよくお声かけいただくようになりました.僕がこうやって仕事をいただけるようになったのも,ブログを書き始めたからだと思います.たまに,あっち側(ヲタク)の人とか,オフ会?とか言われますが,僕はれっきとしたこっち側(リア充)の人です(笑).

現在290の記事がアップされています.昨日これまでの記事をかるく見返していました.過去を振り返ると,自分がやってきたこと,これからやるべき事が見えてきます.


僕はApple信者ですが,ADOCは紆余曲折を経てiPadアプリにしました.
仙台,埼玉のお祭りを経て
ついにリリースー! 「じぇじぇ〜」



中にはこんな思い出深い記事なんかも...


僕はこれからどこにいくのだろうか... このブログは,サブタイトルの「作業療法の未来が明るくなるような話題を微力ながら提供できればと思います」という思いで書いているので,それを継続するのみです.

そしていつか,車で日本一周しながら,皆さんに直接お会いして「作業療法の未来が明るくなるような話をしてみたいです」.

例えば,4/1〜3 山形県,4/4〜6 宮城,4/7〜9 岩手... と事前に47都道府県のスケジュールを立てて,お呼ばれした施設へおじゃまして,沢山のOTと話をしてみたいです.

なんでそんなことをしたいのかよく分からないけども,それが出不精な僕の夢です(笑)
いつできるかわかりませんが,その際には呼んでください(笑)

ではでは,最後まで読んでいただきありがとうございました.


2013年5月6日月曜日

日本臨床作業療法学会 立ち上げます

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酒弱いのにゼロ次会したがるtomoriです.しかも飲み会の帰りで,確かに横須賀線で横須賀に向かったはずなのに、気づいたら戸塚でした.

昨日は湘南OTで講義させていただきました.全体的に、笑いあり、笑いあり、笑いありの三拍子そろった楽しい会でした(笑)。ご参加下さった方々、お気遣い頂いたスタッフの方々、本当にありがとうございました。

全国から集まった参加者が2日で500名くらいということで、まだまだ職場で受け入れてもらえないという話も聞きますが、作業を大切にしようという風潮が確実に高まっていると実感します。


そこで、楽しい会の最後に、one more thing ということで、澤田さんからサプライズニュースが飛び込みました。

日本臨床作業療法学会の立ち上げです。パチパチパチー!


この学会の特徴は、
 1. 作業を大切にする
 2. 学際的
 3. 一人ひとりが主役


です。学会長の澤田さんが熱く語ってくれました。それを実現するために、

 1.学術集会・講演会等の開催
 2.機関誌(オンラインジャーナル)の発行
 3.その他の事業

を行っていきます.僕は雑誌の編集委員長を仰せつかりました.形体はフリーアクセスのオンラインジャーナルです.せっかく書いた大切な論文を多くの人に読んでもらうため,そして作業を大切にした作業療法を広めるためにも,オンラインジャーナルにさせてほしいと提案しました.別刷りも含め,冊子はございません。あと会員でないと投稿できませんので,入会の上どしどしご投稿ください.


なんだこの学会は?とお思いの方もいらっしゃると思います。うちらぐらいの若い人で立ち上げています。未熟者ですが、僕たちもこの会を通して勉強させてもらいながら、臨床に貢献できればと思います。ご意見、ご指導のほどよろしくお願いします。

なお、第一回の学術大会ですが、
平成26年3月22日(土)〜23日(日)
神奈川県立保健福祉大で行います。
プログラムなどは調整中ですが、楽しい企画を考えていますので、ぜひご参加下さい。

最後まで読んでいただきありがとうございました。



2013年5月2日木曜日

tomori lab 文献抄読会(2)  作業療法のこれまでとこれから

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料理男子 ohnoです.今回は,日本の作業療法がどのような変遷を辿って現在に至り,そして今後はどのような方向性で展開すべきかについて,以下の書籍および論文から得られた知見を参考に私見を書かせて頂きたいと思います.

1. 作業療法の歴史を分析する意義

作業療法士であれば誰もが「作業とは?作業療法とは?」という疑問を抱くことがあるであろう.鎌倉は「作業療法とは何かを考えるときには,まずそのルーツを知ることから始めるのが正当だと思う.…(中略)社会変動の大波を受けてあちらに揺れ,こちらに揺れを繰り返してきた作業療法の歴史は,ひとつの職業のありようがどんなに多く時代に影響されるものかを教えてくれた.…(中略)過去から教訓を読みとって現在に生かすというのも,思考の鍛錬のひとつの形だと思う.何かがいまここに存在しているのには,必ずわけがある.」と述べている.歴史を読み解くことは,様々な時代背景の中で作業療法の特性や期待されてきた役割についての認識を深めていくことでもある.今後の日本の作業療法の在り方について考えていくために,先人達がいかにして作業療法に携わってきたかを以下に記していく.


2. 歴史分析

野藤は,Kielhofner & Burkeが用いたパラダイム論に沿って作業療法の歴史的変遷の分析を行っている(図参照).



3. ~1960年代:前パラダイム

 日本における作業療法は,精神科領域,結核患者,肢体不自由児などに対して,医師がそれまでの医療とは少し異なる形で先駆け的に行われていた.精神科医の呉秀三は,それまでの隔離,監置,拘束を一掃して,欧州滞在期間に学んだ作業療法を行った.呉は「作業をよく行えないことが精神の不均衡をきたし,作業をよく行うことが病気を駆逐し,病者の心と体を鍛え,心身のよき循環を生む」と考えていた.彼は,裁縫,洗濯,わら工作などの屋内作業や,土木工事,農業,畜産などの屋外作業,さらには特殊作業として事務補助,医務補助,炊事人補助など,その時代の一般市民が行っていたであろう作業を治療的に用いていた.こられの作業には,補食(おやつ)や賃金などの報酬を伴っていた.
 結核はストレプトマイシンなどによる化学療法が開始されるまで,安静と栄養の他に治療法のない疾患とされていた.医師である野村実は自身の結核闘病体験から,療養早期から作業を開始することを推奨しており,「作業」とは生活に生きる喜びを与え,生命の意味を味わうために必要不可欠なものとしている.また,結核患者に対する作業療法は,その目的が病理的治癒にとどまらず,社会的治癒に置かれていたことが特徴と言えるだろう.そのため,療養者の生活史,価値,興味を重要視され,読書,書道,農耕,園芸などの経済力を取り戻して社会復帰するための収入につながる作業が用いられることもあった.
 また”肢体不自由児療育の父”と呼ばれる高木憲次は,肢体不自由児のための医療,教育,職能の三位一体を理想に掲げ,1942年に整肢療護園を設立した.整肢療護園では,①医療,②教育と生活指導,③生活指導と更生指導,④職能指導,⑤職業指導が段階的に実施された.特に,⑤職業指導を行うことが望ましいと考えられ,その前段階である④職能指導では,職業修得に必要な機能の獲得を目的に,運筆,運針,木工道具の操作などの作業が用いられていた.
 これらの取り組みに共通して言えることは,精神疾患患者,結核患者,肢体不自由児などの慢性疾患患者に対して向けられていた偏見や蔑視に異議を唱え,彼らを機能的に快復させることだけでなく,人として生きていくための力を引き出し,生を楽しむことを教えることを目的とした人道主義的な概念が強く感じられることである.
 


4. 1970年代:還元論パラダイム

 大戦後,作業療法の対象に傷痍軍人などの身体障害者が加わることとなった.そして,欧米のリハビリテーション医学を視察した医師らによって,身体障害リハビリテーションの重要性が日本各地へと伝えられていった.当時のアメリカは,医学モデルによる還元主義的な作業療法が全盛であり,日本の作業療法にも大きな影響を与えた.作業療法士たちの関心の中心は,神経筋促通手技,ボバース法,感覚統合療法などのファシリテーションテクニックにあり,機能障害を解決することで日常生活の再建ができると考えられていた.
 また,1974年,社会保険診療報酬点数表の中に初めて,作業療法士が関与するものが採用され,作業療法が医療の一部であることが法的に認められた.一方,1975年,日本精神神経学会は作業療法の点数化に反対した.以下,総会の決議の全文.

「今日の我が国の精神病院の医療状況は、強制的拘禁状況への傾きが強い。その中で入院患者の人権を擁護することは、緊急の課題として登場している。作業は、入院患者の生活の一部であるとはいえ、上述の現在的状況の許で、これを療法として位置付けることは、この課題とりわけ患者の生活及び労働に関する諸権利の擁護に鋭く対立するものである。この意味において、今回『作業療法』点数化に反対する」.

これは,生活療法全盛であった精神医療全体の異議申し立てと連動しているとの意見もあるが,いずれにせよ生活療法との違いを求められるかたちで,精神科作業療法は他職種から自らの立ち位置を大きく揺さぶられたのは事実である.


5. 1980年代:危機・葛藤

 1980年代は,老人保健法(1982年制定)や精神保健法(1987年制定)などの保健福祉施策の影響を受けて,医療の現場に加えて,保健福祉領域へと作業療法の活動場面が広がっていった.また,高齢社会の到来が作業療法の需要を高め,養成校が徐々に設立された.
 需要が高まっていく一方,作業療法士の中で専門性について葛藤が生まれ始めた.これは,作業療法の対象に脳血管疾患のように完全な機能回復が望み得ない患者が増加したことや,作業療法士が治療的手段として用いる作業の治療的意義を,科学的に他職種に説明できないことなどが要因として挙げられている.
 1986年に開催された第20回日本作業療法学会では,「作業療法・その核を問う」というテーマでシンポジウムが行われている.鎌倉は当時の状況を,「作業療法の世界では,脳卒中患者や脳性麻痺の子どもに対して,理学療法士と同じような徒手的運動療法にたくさんの時間を費やすセラピストが多くみられるようになった.まったく同じとはいわないまでも,運動療法において促すのと同じ運動を”物の移動”という課題に置き換えて行うことが作業療法だと考える者はさらに多くなった.…(中略)約20年の経験を積み重ねて,日本の作業療法士たちも,本当にこのままでよいのか.と自分に問うようになっていた.」と述べている.1970年代,80年代とも作業療法の核は揺さぶられているが,前者は他職種からの批判によるもので,後者は自らの葛藤によるものであることが大きな違いである.

 

6. 1990年代:生活・地域・QOLパラダイム

 1990年代になると,地域リハビリテーションという言葉が生まれ,また一般的にQOL(Quality of Life,生活の質)が問われる時代となってきた.欧米では,1980年後半から1990年代にかけて,A Model of Human Occupation(人間作業モデル),Occupation Science(作業科学),Canadian Model of Occupation Performance(カナダ作業遂行モデル)が発表された.これらの学問をもとに,COPMなどのツールが開発され,海外では「作業」への関心が高まっていた.なかでも,Clarkらは在宅高齢者に対して作業科学をベースにした介入戦略を開発し,大規模なRCTにてその効果を実証しており,現在でも作業療法のランドマーク研究となっている.
 鎌倉は「1990年代は,『医学モデル』から『作業行動学モデル』へという,作業療法モデルの転換がはっきりと口に出されるようになった時代として記憶されると思う」と述べている.しかしこれは海外の作業療法に関して言及したものであると推察される.確かに海外では作業療法士自らが様々な学問を設立し,そして主張をしていくことでパラダイムシフトが起き始めたが,日本の一般的な臨床現場においては,1980年代の延長として医学モデルが優勢であった.


7. 2000年代~:原点回帰

 2000年初頭,従来の国際障害分類(ICIDH)が国際生活機能分類(ICF)と改定されたことにより,障害から健康に焦点が当てられるようになってきた.それに加え,上記の1900年代に海外で開発された学問やツールが日本語に翻訳され,実際の臨床現場において使われるようになった.その一方で,臨床介入ではエビデンス(科学的根拠)が求められるようになり,未だ臨床介入試験が少ない作業療法においては,少しの混乱が見られるようになった.
 また診療報酬制度においては,様々な変化があった.まず2000年には介護保険制度が施行.地域のおける福祉サービスの民営化が始まり,地域で勤務する作業療法士の数も増加した.また医療においても,2002年に診療報酬に初めてメスが入り,単位制が導入された.これにより早期リハ,個別療法(マンツーマン)が重視されるようになった.くわえて,回復期リハ病棟も新設され,訓練室のみならず病棟などの実生活場面での訓練が推奨されるようになった.
 2010年代になると,日本作業療法士協会が「人は作業をすることで元気になれる」をキャッチフレーズに,生活行為向上マネジメントを推奨するようになった.2011年,日本作業療法学会では大会テーマに「意味のある作業の実現」が掲げられ,作業を重視する風潮が少しずつ浸透してきた.



8. 今後の日本型作業療法の展望

  歴史的変遷の中で,作業療法の先人たちが医療という枠組みのなかで,いかに苦心して作業療法を育ててきたかが感じられた.1960年代には,医師がそれまでの医療とは少し違う側面,すなわち人道的な支援に着目する形で作業療法を土台を創り,1966年には作業療法士という国家資格を誕生させた.しかし1970年代に入り,還元論や日本精神神経学会など周囲のあおりを受けるかたちで医療としての立場を強めなければいけなかった.作業療法では,1980年代から今日まで,「作業とは何か?専門性とは何か?」と,もう30年も自分たちの仕事の意義を問い続けている.本来,このような状況下では専門性をより研ぎ澄まし,自他ともに分かりやすくしていく必要があるだろう.しかし現在では(専門作業療法士を見れば分かるように)職域拡大のため専門性が逆に多様化し,ますます自分たちの専門性は何だ?状況に陥っている.
 一方,海外の作業療法では1980年代から作業療法独自の学問やツールを開発し,それを醸成させ,人道主義とは言わないにせよ,再び従来の作業療法が行っていた「作業」に焦点を当て,それが自分たちの専門だとアピールしつつある.日本も2000年あたりから海外で開発された学問やツールが翻訳され,最近では臨床での認知度(使用度は少し別)はかなり広まってきた.しかし医療をベースにした環境下でなかなか実践が困難であるという声もまだまだまだまだ多い...
 そこで,これからどうすれば良いのかという問いが生じるのだが,個人的には病院を出て地域に出るとか,医療ではなく保健福祉にいくとかじゃなく,医療の中に位置づけられている作業療法をポジティブに捉えていくことにあると感じている.現在,日本では作業療法士の6~7割が医療機関に従事している(2010年度作業療法白書,日本作業療法士協会).これは,日本独自の社会保障制度の発展であろう.東も機関誌作業療法(Vol.31 No.2 2012)の巻頭言にて「日本の作業療法の現状を前向きに肯定した上で,諸外国で実践されている作業療法の良い部分を積極的に取り入れた『日本型作業療法』を定義,構築していくことではないだろうか」と提案している.
 課題はあるにせよ,現在日本の社会保障制度は均一性,アクセスの良さ,選択肢の多さなど,バランスの良さで世界一と言われている.日本では医療の中に作業療法が位置づけられていることを嘆くこともあるかもしれないが,視点を変えれば世界一の医療が土台にあるわけで,海外の学問やツールを日本の医療で醸成させ,上手く活かした形で世界へアピールすることも可能であろう.例えば,GOGO計画では地域作業療法が重視されているが,医療資源やマンパワーが未だ乏しい地域のフィールドよりも,医療資源やマンパワーが比較的充実している病院での作業療法を充実させることができれば,地域作業療法への波及効果も大きいと思われる.
 これまで,日本の作業療法は欧米の作業療法,医師や社会制度による大きな影響を受け,揺さぶられ,成長を続けてきた.今後は,医療との調和をはかりつつ,日本独自の作業療法を醸成させていく必要があると思われる.


9. 引用文献

鎌倉矩子; 山根寬; 二木淑子. 作業療法の世界: 作業療法を知りたい・考えたい人のために. 三輪書店, 2004.
野藤弘幸. 日本における作業療法の歴史的分析-身体障害領域を中心に. 作業行動研究, 2003, 7: 6-16.
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